【医療】失語症と構音障害と失声症の違い【解説】
2026/06/26
【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害27
言葉が出ないのは全部失語症?|失語症・構音障害・失声症・心因性失声症の違いをわかりやすく解説
はじめに

「父が急に話せなくなった」
「ろれつが回らない」
「声が出なくなってしまった」
こうした症状が突然現れると、
「失語症(脳卒中)か!?」
と不安になる方も多いのではないでしょうか。
しかし実は、「話せない」といっても原因は一つではありません。
- 言葉そのものがうまく使えない
- 発音だけが難しい
- 声が出ない
- 心理的な要因で声が出なくなる
など、さまざまな状態があります。
原因によって、必要な検査やリハビリ、対応方法も異なります。
この記事では、
- 失語症
- 構音障害
- 失声症
- 心因性失声症
それぞれの特徴や違いについて、できるだけわかりやすく解説します。
急に話せなくなったら失語症?
「話せない」と聞くと、多くの方が最初に思い浮かべるのが失語症です。
確かに、脳卒中などが原因で突然言葉が出にくくなることはあります。
しかし、話せない原因は失語症だけではありません。
例えば、
- ろれつが回らない
- 声だけが出ない
- ささやき声しか出ない
といった症状では、別の原因が考えられることもあります。
そのため、「話せない」という見た目だけで判断することはできません。
「話せない」にもいくつか種類があります
まずは、それぞれの違いを簡単に見てみましょう。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| 失語症 | 言葉を理解したり、言葉にしたりすることが難しくなる |
| 構音障害 | 言いたいことは分かっているが、発音しにくい |
| 失声症 | 声帯などの問題で声が出にくい・出ない |
| 心因性失声症 | 強いストレスなど心理的な要因で声が出なくなることがある |
一見似ているように見えますが、原因も困りごとも異なります。
失語症とは?

失語症とは、脳の言語をつかさどる部分が障害されることで、
「言葉を理解すること」や「言葉で伝えること」が難しくなる状態です。
例えば、
- リンゴを見ても「リンゴ」という言葉が出てこない
- 相手の話の意味が分かりにくい
- 読んだり書いたりすることも難しくなる
などの症状がみられることがあります。
言葉そのものを扱う力に影響が出るため、
「何を話したいか分からない」
「言葉が見つからない」
という苦しさがあります。
構音障害とは?

構音障害とは、言いたい内容は分かっているものの、発音するための口や舌、唇などの動きがうまくいかず、言葉が聞き取りにくくなる状態です。
手足のまひと同じように、口・舌・喉などの筋肉がうまく動かせないことで、きれいな音声が作りにくくなっています。
声帯は正常に振動しているため声は出るのですが、口周りの動きが悪く、言葉の形を整えるのが難しくなります。
例えば、
- ろれつが回らない
- 言葉がゆっくりになる
- 発音が不明瞭になる
といった様子がみられます。
声は出ている。
でも言葉の形を整えられない。
楽器でいうと、ギターの弦は鳴っているのに、左手で弦をうまく押さえられず、不協和音が出ているような状態に近いです。
言葉は分かっている。
「ありがとう」と言いたい。
でも口や舌が思うように動かず、
「あ…ぃり…が…」
のようになってしまうことがあります。
疑似体験
構音障害は、口いっぱいに飴玉などを入れたまま話そうとするような感覚に例えられることがあります。
もちろん実際の症状は人それぞれですが、「何を話したいかは分かっているのに、口が思うように動かない」というもどかしさがあります。

失声症とは?

失声症とは、何らかの理由で声帯がうまく振動できなくなり、声がかすれたり出なくなったりする状態です。
息はしっかり出ているし、口や舌も普通に動かせます。
しかし声帯が振動しないため、声そのものが作れません。
腫瘍による圧迫や手術後の合併症、感染・炎症、外傷などが原因で起こる声帯麻痺などでみられることがあります。
楽器でいうと、ギターの弦が切れている状態です。
指は動くけれど、音そのものが鳴らない、そんなイメージに近いです。
言葉を理解する力や話したい内容は保たれていることが多く、「声を出す」という部分だけが難しくなります。
言葉は思い浮かんでいる。
何を話したいかも分かっている。
でも、声が出ない。
一生懸命口を動かしても、相手には声が届かない。
そんな状態です。
心因性失声症とは?

心因性失声症は、強いストレスや心理的な負担が関係していると考えられる状態です。
声帯そのものに大きな異常が見つからない場合でも、極度の緊張などにより声帯の動きが乱れ、
- 声が出ない
- ささやき声しか出ない
といった症状がみられることがあります。
身体的な原因だけでなく、心理的な背景も関係するため、心のケアを含めた対応が大切になります。
気になる場合は、耳鼻咽喉科、心療内科、精神科などへの相談も選択肢の一つです。
失語症・構音障害・失声症・心因性失声症の違い
|
項目 |
失語症 | 構音障害 | 失声症 | 心因性失声症 |
|---|---|---|---|---|
| 言葉の理解 | 低下することがある | 保たれることが多い | 保たれることが多い | 保たれることが多い |
| 言いたい内容 | 出にくいことがある | 分かっている | 分かっている | 分かっていることが多い |
| 発音 | 保たれることが多い*1 | 障害される | 声が出ないため難しい | ささやき声などになることがある |
| 声 | 出ることが多い | 出る | 出にくい・出ない | 出にくいことがある |
| 主な原因 | 脳の言語中枢 | 発声器官・神経・筋など | 声帯・喉頭など | 心理的要因 |
このように、「話せない」という症状でも、原因によって困っていることや必要な支援は異なります。
実際の症状には個人差があり、複数の症状が同時にみられることもあります。
*1:失語症の種類や合併症状によって話し方が変化することがあります
【Note】失語症と構音障害は一緒に起こることがあります
失語症では「言葉を考えること」が難しくなり、構音障害では「言葉を発音すること」が難しくなります。
脳卒中では、この両方が同時に起こることも少なくありません。
そのため、「話せない」という見た目だけで判断することは難しく、医師や言語聴覚士などによる評価が大切になります。
本人は「話したい」のに伝わらない
ご家族は、
- 声が出ない
- 言葉が出ない
- ろれつが回らない
という「結果」を見ています。
しかし、ご本人の中では、「言いたいことがあるのに伝えられない」という苦しさを抱えていることがあります。
「うまく話せない」ことを責められたり、急かされたりすると、不安や焦りが強くなることもあります。
だからこそ、少し待つこと。
最後まで話を聞こうとすること。
伝わった内容を確認しながら会話すること。
こうした関わりが、ご本人の安心につながります。
まとめ
「話せない」といっても、その原因は一つではありません。
- 失語症:言葉そのものの障害
- 構音障害:発音の障害
- 失声症:声が出ない障害
- 心因性失声症:心理的な要因による発声の障害
それぞれ原因も対応方法も異なります。
また、脳卒中などでは失語症と構音障害が同時にみられることもあり、「話せない」という見た目だけで判断することはできません。
大切なのは、「話せない人」として見るのではなく、「話したいのに思うように伝えられず困っている人」として理解することです。
「言葉が出ない」「ろれつが回らない」「声が出ない」といった症状がみられた場合は、原因を正しく見極めることが大切です。
原因を正しく知ることで、
ご本人がどのようなことで困っているのか、
どのように声をかければ安心してもらえるのかも見えてきます。
急に話せなくなった時は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
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介護が必要な方のリハビリ
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