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【解説】意識と見当識ってなに?意識障害・見当識障害との違いをわかりやすく解説

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意識と見当識とは?

意識と見当識とは?

2026/07/02

【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害 意識と見当識

意識は「脳のスイッチ」、見当識は「今の自分の現在地を知るGPS」|「今日は何日?ここはどこ?」と聞かれる理由をわかりやすく解説

はじめに

病院やリハビリの場面で、

「今日は何日ですか?」
「ここはどこですか?」
「私が誰か分かりますか?」

と質問されている場面を見たことはありませんか?

 

初めて見ると、

「そんな簡単なことを、なぜ聞くの?」

と不思議に感じる方もいるかもしれません。

 

実は、この質問には大切な意味があります。

 

脳卒中や頭部外傷などで脳に障害が起こると、

  • ぼんやりして反応が鈍くなる
  • 今日が何日か分からなくなる
  • 自分がいる場所が分からなくなる
  • 家族のことが分からなくなる

といった症状がみられることがあります。

 

これらは一見似ているように見えますが、

「意識」と「見当識」という、別々の働きが関係しています。

 

この記事では、

  • 意識とは何か
  • 見当識とは何か
  • 病院で「今日は何日ですか?」と質問される理由
  • 意識障害と見当識障害の違い
  • 高次脳機能障害との関係

について、できるだけ専門用語を使わず、生活に置き換えながら解説していきます。

病院で「今日は何日?」「ここはどこ?」と聞かれる理由

病院で診察やリハビリを受けていると、

「今日は何日ですか?」
「ここはどこですか?」
「今は何時頃ですか?」

と聞かれることがあります。

 

ご本人やご家族の中には、

「そんなことを聞いて何が分かるの?」

と思われる方も少なくありません。

 

しかし、この質問には、
脳が今の状況をどれくらい正しく認識できているか
を確認する目的があります。

 

例えば、

今日は何日なのか。
今、自分はどこにいるのか。
目の前にいる人が誰なのか。

こうしたことが分かるのは、私たちにとって当たり前のように感じます。

 

ですが、脳の病気やけがによって、この「当たり前」が難しくなることがあります。

そのため医療スタッフは、短い質問の中から、

  • 意識ははっきりしているか
  • 見当識は保たれているか
  • 症状が変化していないか

などを確認しています。

 

一見すると簡単な質問ですが、脳の状態を知るための大切な手がかりになっているのです。

意識とは?

「意識」という言葉を聞くと、
「気を失っているかどうか」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

 

もちろん、それも意識の一つです。

 

しかし医療でいう意識とは、

「周囲に気づき、自分や周囲の状況を認識し、それに反応できる状態」

を指します。

 

例えば、

朝、目が覚める。

家族に「おはよう」と返事をする。

テレビを見て笑う。

暑ければエアコンをつける。

 

こうした「周りの出来事に気づいて反応できる状態」を、
医療では「意識がある」と考えます。


こうした行動はすべて、意識が十分に働いているからできることです。

 

反対に意識が低下すると、

  • 呼びかけても反応が遅い
  • 目を開けていてもぼんやりしている
  • 会話がかみ合わない
  • 指示への反応が鈍い

などの様子がみられることがあります。

 

つまり意識とは、脳のスイッチがしっかり入っている状態とも考えることができます。

スイッチが入っていなければ、周囲の情報を受け取ることも、適切に反応することも難しくなります。

見当識とは?

一方で、見当識(けんとうしき)とは、

「今の自分の状況を正しく理解する力」

のことです。

 

例えば、

  • 今日が何月何日なのか
  • 今いる場所はどこなのか
  • 目の前にいる人は誰なのか

といったことを理解する力です。

 

普段の生活では、ほとんど意識することはありません。

 

朝起きれば、
「今日は月曜日だから仕事だ」

病院へ来れば、
「ここは○○病院だ」

家族に会えば、
「娘が面会に来てくれた」

と自然に分かっています。

 

これは見当識が保たれているからです。

 

しかし脳の障害によって見当識が低下すると、

  • 入院しているのに「家に帰る」と言う
  • 朝なのに夜だと思っている
  • 病院なのに職場だと思っている
  • 家族を別の人と思い込む

などの様子がみられることがあります。

 

ご家族は驚いてしまうこともありますが、
ご本人は混乱している中で、一生懸命状況を理解しようとしている場合も少なくありません。

 

そのため、「違うでしょ!」と強く訂正するよりも、
まずは安心できる環境を整えながら関わることが大切です。

意識障害とは?

意識障害とは、

脳のスイッチが十分に入らず、周囲の状況に気づいたり反応したりすることが難しくなる状態です。

 

重症になると呼びかけても目を開けないことがありますが、意識障害はそれだけではありません。

 

例えば、

  • 呼びかけるとゆっくり目を開ける
  • 返事はあるが会話が続かない
  • 眠っているような状態が続く
  • ぼんやりして集中できない
  • 反応がいつもより遅い

なども、意識障害としてみられることがあります。

 

「眠っている」のとは少し違い、脳そのものが十分に活動できていない状態です。

 

そのため、
名前を呼んでも返事が遅かったり、
目を開けても、周囲をぼんやり見ているだけだったりすることがあります。

 

意識障害が強い時には、当然ですが、

「今日は何日?」
「ここはどこ?」

という質問に答えることも難しくなります。

 

まずは覚醒が良好な状態が大前提になるからです。

【Note】JCS・GCSとは?

医療現場では、意識の状態を客観的に評価するために、

JCS(Japan Coma Scale)や、

GCS(Glasgow Coma Scale)

という評価方法が使われています。

 

どちらも、

「意識がどの程度はっきりしているか」

を共通の基準で評価するためのものです。

 

例えば、救急外来や病棟で、

「JCS1です」

「GCS15点です」

といった表現が使われることがあります。

 

一般の方が覚える必要はありませんが、

医療・介護職同士が状態を共有するために、とても重要な指標となっています。

【Note】JCSとGCSの違い

JCSとGCSは、どちらも意識レベルを評価する方法ですが、少し特徴が異なります。

 

JCS(Japan Coma Scale)

日本で広く使用されている評価方法です。

「呼びかけにどのように反応するか」を中心に評価します。

救急搬送や病院、介護施設など、日本の医療現場では非常によく使われています。

 

GCS(Glasgow Coma Scale)

世界的に広く用いられている評価方法です。

次の3つを組み合わせて評価します。

  • 目を開けるか(Eye Opening)
  • 会話ができるか(Verbal Response)
  • 手足を動かせるか(Motor Response)

この3項目を点数化し、合計3~15点で評価します。

 

海外の医療機関や学術論文でも標準的に使用されているため、国際的な共通指標として知られています。

見当識障害とは?

見当識障害とは、

意識は比較的はっきりしているものの、自分の置かれている状況を正しく理解することが難しくなる状態です。

 

例えば、普通に会話はできるのに、
「今日は何日ですか?」
と聞くと、違う日付を答えてしまう。

 

病院にいるのに、
「そろそろ会社へ行かなきゃ」
と言う。

 

面会に来た娘さんを見て、
「妹さんですか?」
と話す。

 

このような様子がみられることがあります。

 

周囲から見ると、
「しっかり話せているのに、どうしてそんなことを言うの?」
と不思議に感じるかもしれません。

 

しかし、ご本人の中では、時間や場所、人とのつながりが混乱していることがあります。

 

見当識障害では、時間・場所・人の順番で障害されることが多いといわれています。

 

そのため最初は、
曜日や日にちを間違える程度だったものが、

症状によっては、
病院なのか自宅なのか分からなくなったり、
誰が面会に来ているのか分からなくなったりすることもあります。

もちろん、症状の現れ方には個人差があります。

意識障害と見当識障害の違い

ここまで読むと、
「どちらも混乱しているように見えるけれど、何が違うの?」
と思われる方もいるかもしれません。

 

大きな違いは『覚醒しているかどうか』です。


両者の違いを一覧にまとめてみます。

項目 意識障害 見当識障害
脳の働き 全体的に低下 比較的保たれている
会話 成り立ちにくいことがある 成り立つことが多い
呼びかけへの反応 遅い・弱いことがある 比較的反応できる
時間・場所・人の理解 確認できないことが多い 間違えることがある
主な困りごと 覚醒・反応そのものが低下する 現在の状況を正しく理解できない

 

つまり、意識障害では、「反応すること」そのものが難しい状態です。

一方、見当識障害では、反応はできても「今、自分がどこで何をしているか」を正しく理解することが難しくなります。

 

一見似ているように見えますが、障害されている脳の働きは異なります。

高次脳機能障害との関係

高次脳機能障害では、見当識障害がみられることがあります。

 

例えば、脳卒中や頭部外傷のあと、

  • 今日の日付が分からない
  • 入院している理由が分からない
  • リハビリを受けたことを忘れてしまう

といった様子がみられることがあります。

 

また、見当識障害だけではなく、記憶障害や注意障害が重なっていることも少なくありません。

そのため、「今日は何日?」という質問に答えられない原因が、必ずしも見当識障害だけとは限らない場合もあります。

 

例えば、新しい出来事を覚えにくい記憶障害があると、日付を覚え続けることが難しくなります。

また、注意障害があると、質問そのものを十分に聞き取れていないこともあります。

 

リハビリでは、「今日は何日でしたか?」と何度も聞かれることがあります。

これは、間違いを探しているのではありません。

 

昨日より変化がないか。
記憶障害なのか。
見当識なのか。
注意障害なのか。

そうしたことを確認するためでもあります。

 

このように、高次脳機能障害では、複数の症状が重なり合って生活に影響していることも少なくありません。

 

だからこそ、「答えを間違えた」という結果だけを見るのではなく、

なぜ答えられなかったのかを考えることが大切です。

【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害11

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【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害1(改訂版)

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【Note】見当識は「現在地を知る力」です

 

見当識という言葉は少し難しく聞こえるかもしれません。

ですが、イメージとしては、

「自分が今どこにいるかを教えてくれるGPS」

のようなものです。

 

普段の私たちは、

  • 今日は何月何日なのか
  • 今どこにいるのか
  • 誰と一緒にいるのか

を、ほとんど意識することなく理解しています。

 

これは、脳の中の「現在地を確認するGPS」が正常に働いているからです。

もしGPSが正しく動かなければ、現在地が分からなくなり、不安になります。

 

見当識障害でも、それと似たことが起こります。

病院にいるのに、「そろそろ家へ帰らないと」と思ったり、昼なのに夜だと思ったりすることがあります。

 

ご本人は冗談を言っているわけでも、わざと間違えているわけでもありません。

脳が現在地(現在の自分と周囲の状況)をうまく確認できず、混乱している状態なのです。


見当識とは、「今の自分がどこにいるかを教えてくれる脳のGPS」といえるでしょう。

【Note】時間・場所・人の順番で混乱しやすいと言われています

見当識障害では、

一般的に、

時間 → 場所 → 人

の順番で分かりにくくなることが多いとされています。

 

例えば最初は、「今日は何日だったかな?」という程度でも、

進行すると、「ここは病院だったかな?」

さらに、「この人は誰だったかな?」というように、混乱が広がる場合があります。

 

もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。
(※高次脳機能障害では特にこの順序が当てはまるとは限りません)

 

そのため、「時間を間違えたから次は場所が分からなくなる」というものではありません。

あくまで一つの傾向として理解しておくとよいでしょう。

 

本人は「分からないこと」に気づいていないこともあります

見当識障害がある方の中には、自分が混乱していることに気づきにくい場合があります。

そのため、ご家族から見ると、
「どうしてそんなことを言うの?」
と驚くこともあります。

 

しかし、ご本人は、その時点で分かっている情報をもとに、一生懸命状況を理解しようとしていることがあります。

強く否定されたり、何度も訂正されたりすると、不安や混乱がさらに強くなってしまうこともあります。

だからこそ、まずは安心できる環境を整え、穏やかに現在の状況を伝えていくことが大切です。

まとめ

意識と見当識は、どちらも脳の大切な働きですが、その役割は異なります。

 

意識は、周囲に気づき、反応できる状態であること。

見当識は、今の時間や場所、人との関係を正しく理解する力です。

 

病院で
「今日は何日ですか?」
「ここはどこですか?」
と質問されるのは、決して意地悪でも、テストでもありません。

 

その方の脳の状態を知り、脳の状態を確認し、より安全な治療やリハビリにつなげるための大切な評価の一つです。


また、高次脳機能障害では、見当識障害だけでなく、記憶障害や注意障害などが重なっていることも少なくありません。

 

そのため、「答えを間違えた」という結果だけを見るのではなく、
なぜ答えられなかったのかという背景を考えることが、ご本人への理解につながります。


その意味を知っているだけでも、病院で交わされる何気ない会話の見え方が、少し変わるかもしれませんね。

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