【高次脳機能障害シリーズ】健忘失語(失名詞失語)とは
2026/05/21
【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害9
健忘失語とは?「分かっているのに名前が出ない」失語症をわかりやすく解説
-失語症 健忘失語(失名詞失語)編-
はじめに

「あれ…ほら…あの人…」
「名前は分かってるのに出てこない」
そんな経験をしたことはないでしょうか。
人の名前
俳優さんの名前
お店の名前
"喉まで出かかっているのに出てこない"感覚は、誰でも経験したことがあると思います。
健忘失語(けんぼうしつご)は、「失名詞失語」と呼ばれることもある失語症です。
会話自体は比較的できることも多く、相手の話も理解できている場合があります。
そのため周囲からは、「ただの物忘れ?」「年齢のせい?」「認知症?」と思われてしまうことがあります。
でも本人の中では、
- 「分かってるのに出てこない!」
- 「あと少しなのに…!」
- 「名前だけ出てこない」
- 「説明はできるのに単語が出ない」
という強いもどかしさが起きています。
今回は、そんな健忘失語について、
- どんな症状なのか
- なぜ名前が出てこなくなるのか
- 実生活でどんな困りごとが起きるのか
- 家族はどう接すればいいのか
を、生活目線でわかりやすくお伝えしていきます。
まず、少し体験してみてください
「あの俳優さん…ほら…」が出てこない感覚
少し想像してみてください。
テレビを見ていて、「あの俳優さん、ほら…よくドラマ出てる…」と、
顔も分かる。
出演作品も分かる。
…でも名前だけ出てこない。
あるいは、「検索したいのに、検索ワードだけ思い出せない」
そんな感覚に近いかもしれません。
頭の中には情報がある。意味も分かっている。
でも、"言葉のラベルだけ出てこない"のです。
健忘失語では、この感覚が日常生活の中で繰り返し起こることがあります。
健忘失語(失名詞失語)とは?
健忘失語(失名詞失語)とは、物や人の名前が出にくくなる失語症です。
脳卒中などによって、言葉を呼び出す機能が障害されることで起こることがあります。
ここで大切なのは、「分からない」のではないという点です。
- 使い方は分かる
- 意味も分かる
- 何に使うか説明できる
でも、"名前だけ出てこない"という状態になります。
どんな特徴がある?
「あれ」「それ」が増え、説明が回りくどくなる
健忘失語では、言葉が出にくくなるため「あれ」「それ」「なんだっけ」が増えることがあります。単語が出てこない代わりに説明で補おうとするため、回りくどい説明が増えます。
例えば、
- 「時計」→「時間見るやつ」
- 「ペン」→「書くときに使うやつ」
- 「冷蔵庫」→「冷たい物を入れるやつ」
これは怠けているわけではなく、"言葉を呼び出しづらい"状態だからこそ起こることです。
本人としては一生懸命伝えようとしており、「伝えたい」気持ちは残っています。
ただ、会話できているように見えても、本人の中では強い疲労感や焦りを感じている場合があります。
会話が止まる
言葉を探している途中で「あー…」「えっと…」と止まってしまうことがあります。
特に焦ると、さらに出にくくなることがあります。
また、「また言葉が出なかったらどうしよう」という不安から、人との会話を避けるようになる方もいます。
ヒントで思い出せることがある
健忘失語では、ヒントがあると出てくる場合があります。
- 最初の文字
- 用途やカテゴリー
- 一緒によく使う言葉
などがきっかけになることがあります。
例えば「と・け・い」の最初の「と」を伝えることで、「あ、時計!」と思い出せる場合もあります。

健忘失語・記憶障害・認知症の違い
ここは特に混同されやすい部分です。
健忘失語は、"言葉を呼び出す"ことが難しくなる障害です。
「時計」という名前が出てこなくても、時間を見る物・壁に掛かっている・朝見た、といった意味や使い方は分かっています。
記憶障害は、"出来事そのもの"を覚えにくくなることがあります。
認知症では、"記憶を含めた脳機能全体"が低下して起きることがあります。
たとえるなら、
- 健忘失語 → 「検索ワードだけ出てこない」
- 記憶障害・認知症 → 「データ自体が見つからない」(言葉以外も思い出せない)
という感覚の違いに近いかもしれません。
健忘失語では「分からない」のではなく、"出てこない"という点が大きな特徴です。
また「喉まで出かかっているのに出ない」感覚が続くこともあります。
なお実際には、脳卒中後では複数の高次脳機能障害が重なって起こることも少なくありません。
伝導失語との違い
伝導失語では、"音の並び"が崩れやすくなります。
例えば「テレビ」を「テベリ」のように言ってしまうことがあります。
一方、健忘失語では、"単語そのもの"が出にくくなります。
似ているようで、少し違う特徴があります。
実生活で起こる困りごと
お店で商品名が言えない
コンビニや飲食店で商品名が出てこず、「黒くて飲むやつ…」のような説明になることがあります。
後ろに人が並んでいると、さらに焦りやすくなります。
病院で症状説明が難しい
「どこがどう痛い」「どんな感じ」を言葉にしづらいことがあります。
そのため診察に時間がかかったり、うまく伝わらなかったりすることがあります。
人名が出ない
家族や知人の名前が出てこず、「ほら、あの人…」となってしまうことがあります。
本人としては分かっているため、恥ずかしさや焦りを感じやすい部分です。
電話で詰まりやすい
電話は表情やジェスチャーが使えないため、「言葉だけで伝えなければならない」負担が強くなります。
会話途中で詰まり、電話自体が怖くなる方もいます。

本人はどんな気持ち?
健忘失語では、焦り・恥ずかしさ・もどかしさ・会話への不安を感じやすい方が少なくありません。
特につらいのは、
意味も使い方も分かっている、
言いたい内容もある、
それでも"名前だけ出てこない"
という状態です。
周囲からは軽く見えやすいですが、本人の中では強いストレスが積み重なっていることがあります。
接し方のポイント
急かさない
言葉を探している途中で急かされると、さらに出にくくなります。
まずは待つことが大切です。
先回りしすぎない
本人が思い出そうとしている途中ですぐ答えを言ってしまうと、「自分で言えた」経験が減ってしまうことがあります。
負担にならない程度に、リハビリの機会と成功体験を増やすことも有効です。
ヒントを出す
最初の文字・用途・カテゴリーなどのヒントで思い出せる場合があります。
「答えを言う」より「きっかけを渡す」イメージです。
言い間違いを責めない
強く否定されると、会話そのものが怖くなることがあります。
安心して話せる環境を作ることが大切です。
回復・改善の可能性について
健忘失語は、リハビリや環境調整によって改善していく場合があります。
例えば、言葉の想起練習やヒントを活用したコミュニケーション方法の習得などを通して、少しずつ話しやすくなることがあります。
回復のペースは人それぞれです。
だからこそ、"伝わりやすい方法を一緒に探していく"姿勢が大切になります。
まとめ

健忘失語(失名詞失語)は、「分かっているのに、名前だけ出てこない」失語症です。
会話できているように見えるため「軽い」「ただの物忘れ」と思われやすいことがあります。
でも本人の中では、焦り・恥ずかしさ・もどかしさ・会話への不安が積み重なっています。
"言葉が出ない"のではなく、"言葉にたどり着けない"苦しさがあるのです。
だからこそ、
- 急かさない
- 待つ
- ヒントを出す
- 安心して話せる環境を作る
ことがとても大切です。
「分からない」のではなく、"出てこない苦しさ"がある。
その視点を持つことが、ご本人を支える第一歩になります。
「名前が出てこない」
「会話が止まる」
「どう接していいか分からない」
そんな悩みを抱えている方は、ぜひルピネにもご相談ください。
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