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「口を開けて」ができないことがある?口腔顔面失行とは

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「口を開けて」ができないことがある?口腔顔面失行とは

【高次脳機能障害シリーズ】口腔顔面失行とは?

2026/06/23

【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害25

「口を開けて」ができないことがある?口腔顔面失行とは

はじめに

「口を開けてください」
「舌を出してください」
「うがいをしてください」

歯科受診や口腔ケア、嚥下評価の場面で、このように声をかけても、うまく動作ができない失行症があります。

もちろん、痛み・不安・拒否感・理解の難しさ・認知症・失語症などが関係していることもあります。

 

ただ、高次脳機能障害の一つとして、口や顔の動作を指示された時にうまく作れなくなることがあります。

それが、口腔顔面失行です。

 

この記事では、口腔顔面失行について、歯科受診や口腔ケアの場面をもとにわかりやすく解説します。

口腔顔面失行とは?

口腔顔面失行とは、口を動かす筋力や「口を開ける」という意思があるにも関わらず、意識的に顔面や口の筋肉を正確にコントロールすることが難しくなる高次脳機能障害です。

簡単に言うと、口や舌、顔の動作が、指示された場面でうまくできなくなる状態で、たとえば、

  • 口を開ける
  • 舌を出す
  • 頬をふくらませる
  • 口をすぼめる
  • うがいをする
  • 息を吹く

といった動作が難しくなります。

ここで大切なのは、食事場面では自然にできることがあるという点です。

食べ物を見て口を開ける、飲み物を飲む、自然な流れで唇を動かす。
こうした場面ではできるのに、

改めて「口を開けてください」と言われるとできないことがあります。

 

そのため、周囲から見ると「さっきは口を開けて食べていたのに」「どうして今はできないの?」と感じやすい症状です。

歯科受診で困ること

口腔顔面失行があると、歯科受診の場面で困ることがあります。

たとえば、口を開けたままにできない・「大きく開けて」と言われても動作が出ない・舌を動かす指示が難しい・うがいのタイミングが分からない・口を閉じる/開けるの切り替えが難しいといった場面です。

歯科スタッフやご家族から見ると、「協力してくれない」「怖がっている」「理解していない」ように見えることがあります。

もちろん、不安や痛みが原因のこともあります。ただ、口腔顔面失行がある場合は、本人が協力したくないのではなく、指示された動作がうまく作れない状態です。

歯科を受診する際は、あらかじめ「口や顔の動作の指示が難しいことがある」と歯科スタッフに伝えておくと、スムーズに対応してもらいやすくなります。
 

口腔ケアで困ること

口腔ケアでも、困りごとが起こることがあります。

  • 口を開けてくれない
  • 歯ブラシを入れるタイミングが合わない
  • 舌を出せない
  • うがいができない
  • 水を含んでも吐き出せない
  • 口をゆすぐ手順が分からない

 

このような場面では、介助者が焦ってしまいます。
ただ、無理に口を開けようとすると、ご本人の不安や緊張が強くなります。

口腔ケアは、身体的にも心理的にも敏感な場面です。
焦らず、状態を見ながら進めることが大切です。

嚥下評価や食事場面との関係

口腔顔面失行は、飲み込みそのものの障害である嚥下障害とは異なります。

ただし、口や舌の動作が関係するため、食事や嚥下評価の場面で、「舌を動かしてください」「口をすぼめてください」「息を吹いてください」といった検査や評価の指示が難しくなることがあります。

 

一方で、実際の食事では自然に口を動かせることもあります。

そのため、「検査ではできないけれど、食事ではできている」ということが起こります。

 

これは、本人がわざとやっていないというより、指示された動作と自然な動作で難しさが異なるためです。

嚥下機能の評価や食事場面での支援については、言語聴覚士(ST)と連携して対応することが重要です。
 

【Note】無意識でできている動作が、意識するとできなくなるのはなぜ?

「口を開けてください」と言われるとできないのに、食事の時には自然に口を開けられる。
これは、ご本人がわざとやっているわけではありません。

食事の場面では、長年繰り返してきた動作の流れの中で自然に口を開けることができます。

一方で、「口を開けてください」「舌を出してください」と指示されると、脳は改めて動作の計画を立て、その動きを作り出さなければなりません

 

これは、自然な動作と、指示を受けて意識的に行う動作で、脳が使う神経ネットワークが一部異なるためと考えられています。

口腔顔面失行では、この「指示された動作を組み立てるネットワーク」がうまく働かないため、食事ではできるのに、検査や歯科受診ではできないということが起こります。

 

家族や介助者ができる工夫

口腔顔面失行が疑われる場合は、声かけだけに頼らず、動作が出やすい状況を作ることが基本です。

 

実物を使う

「口を開けて」と言葉だけで伝えるより、スプーンや歯ブラシを見せた方が動作につながりやすいことがあります。
食事や口腔ケアの流れの中で、自然に口が動きやすくなる場合があります。

 

見本を見せる

介助者が実際に口を開ける・舌を出す・頬をふくらませるなど、動作を見せることで伝わりやすくなることがあります。
ただし、見本を見せても難しい場合もあります。
うまくいかない時は、無理に繰り返さないことも大切です。

 

タイミングを合わせる

口腔ケアや食事では、本人の表情・呼吸・緊張の様子を見ながらタイミングを合わせることが大切です。
急に歯ブラシを入れたり、強い声かけをしたりすると、かえって口を閉じてしまうことがあります。

 

できる場面を活かす

「指示するとできないけれど、食事場面ではできる」という場合は、自然な流れを活かすこともあります。
評価やケアの場面でも、本人が動作を出しやすい状況を探すことが大切です。

「拒否している」と決めつけないために

口を開けてくれない場面では、介助者も困ります。
特に歯科受診や口腔ケアでは、時間も限られているため、焦りやすい場面です。

ただ、「嫌がっている」「協力してくれない」「わざと口を閉じている」と決めつけてしまうと、ご本人もつらくなります。

 

「なぜできないのか」を一つに決めつけず、痛みはないか・怖さはないか・言葉が理解できているか・失行が関係していないか・自然な場面ではできるかを見ていくことが大切です。

まとめ

口腔顔面失行とは、口や舌、顔の動作が、指示された場面でうまくできなくなる状態です。

生活の中では、

  • 口を開けてと言われてもできない
  • 舌を出せない
  • うがいができない
  • 口腔ケアが難しい
  • 歯科受診で口を開けられない
  • 嚥下評価の指示が難しい

といった形で見られます。

 

ただし、食事場面など自然な流れではできるため、「さっきはできたのに」「嫌がっているのかな」「協力してくれないのかな」と誤解されやすい症状です。

 

無理に口を開けさせようとするのではなく、実物を使う・見本を見せる・タイミングを合わせる・できる場面を活かす・不安や痛みにも配慮するという視点が大切です。

 

ご本人を責めるのではなく、どんな場面なら動作が出やすいかを一緒に探していくことが、口腔ケアや歯科受診をより安心して行うことにつながります。

声かけだけで始めるのではなく、歯ブラシを見せながら口元に近づけるところから試してみてください。

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