【高次脳機能障害シリーズ】逆行性健忘とは?
2026/06/10
【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害13
逆行性健忘とは?|過去の記憶が抜けるときに起こること
はじめに

家族写真を見せても、思い出せない。
結婚した時の記憶が曖昧になっている。
発症前後の出来事が抜けている。
そんな場面に出会うと、ご家族は大きなショックを受けます。
「私のことを忘れてしまったの?」
「大切な思い出だったのに」
「もう元には戻らないのだろうか」
高次脳機能障害では、過去の記憶が一部抜けることがあります。
これを、逆行性健忘と呼びます。
この記事では、逆行性健忘について、家族の気持ちにも触れながら、生活目線で解説します。
逆行性健忘とは?
逆行性健忘とは、脳の損傷が起きる前の出来事を思い出しにくくなる状態です。
特に、事故や脳卒中の前後の記憶が抜けることがあります。
例えば、
- 入院前の出来事を覚えていない
- 事故の前後を思い出せない
- 家族との一部の思い出が抜けている
- 結婚や仕事に関する記憶が曖昧
- 最近の過去ほど抜けやすい
ということがあります。
ただし、すべての過去が消えるわけではありません。
どの時期の記憶が抜けるか、どの程度思い出せるかには個人差があります。
記憶が定着してからの時間が短いものほど影響を受けやすく、発症に近い時期の記憶が抜けやすい傾向があります。
疑似体験|アルバムの一部だけ消えている感覚
逆行性健忘は、アルバムの一部だけページが抜けているような感覚に近いかもしれません。
子どもの頃の写真は残っている。
若い頃の仕事の写真も残っている。
でも、ある時期のページだけ見つからない。
周りの人は、
「この時、みんなで旅行したよ」
「この時、こんな話をしていたよ」
と教えてくれる。
でも、自分の中にはそのページがない。
ご本人にとっても、不安で不思議な感覚になることがあります。
家族にとってショックが大きい症状です
逆行性健忘は、ご家族にとって特につらい症状になることがあります。
なぜなら、忘れられるのが“家族にとって大切な思い出”であることがあるからです。
例えば、
- 結婚記念日のこと
- 子どもが生まれた時のこと
- 家族旅行
- 一緒に乗り越えた出来事
- 介護してきた時間
こうした記憶が曖昧になると、家族は傷つきます。
「私たちの思い出は消えてしまったのか」と感じてしまうこともあります。
その気持ちは自然です。
ただ、本人が家族を大切に思っていないということとは限りません。
記憶として取り出しにくくなっている場合があります。

発症前後の記憶が抜けることがあります
逆行性健忘では、脳損傷の前後の記憶が抜けやすいことがあります。
例えば、
- 倒れる直前のこと
- 救急搬送されたこと
- 入院初期のこと
- 退院前後のこと
が曖昧になることがあります。
ご家族はその期間をよく覚えていても、ご本人には記憶が残っていないことがあります。
そのため、同じ出来事について家族と本人の認識がずれるのです。
家族にとっては大変だった出来事でも、本人は覚えていない。
このずれが、家族のつらさにつながることもあります。
無理に思い出させなくてもよい場面があります
ご家族としては、
「思い出してほしい」
「覚えていてほしい」
と思うのは自然です。
しかし、無理に思い出させようとすると、ご本人が混乱したり不安になったりすることがあります。
特に、事故や病気に関する記憶は、本人にとって負担になる場合もあります。
関わる時は、
- 急に問い詰めない
- 覚えていないことを責めない
- 写真や話で少しずつ共有する
- 本人の反応を見ながら進める
- 不安が強い時は無理をしない
ことが大切です。
写真や思い出話が助けになることもあります
逆行性健忘がある場合、写真や物、場所が記憶を支える手がかりになることがあります。
例えば、
- 家族写真
- 昔住んでいた場所
- 好きだった音楽
- 仕事で使っていた道具
- よく行っていたお店
- 家族との会話
などです。
ただし、必ず思い出せるわけではありません。
「思い出させるため」よりも、
「安心できるつながりを作るため」
という姿勢で関わると、ご本人にもご家族にも負担が少なくなります。
前向性健忘との違い
前向性健忘は、新しいことが記憶として残りにくい状態です。
逆行性健忘は、過去の出来事を思い出しにくい状態です。
簡単に言うと、
- 前向性健忘:これからの記憶が残りにくい
- 逆行性健忘:過去の記憶が抜ける
という違いがあります。
ただし、実際には両方が見られることもあります。

まとめ
逆行性健忘とは、過去の記憶が一部思い出しにくくなる状態です。
家族写真を見ても、すぐには思い出せないことがある。
結婚や旅行の記憶が曖昧。
発症前後の出来事が抜けている。
こうしたことが起こる場合があります。
ご家族にとっては、とてもショックの大きい症状です。
しかし、覚えていないことが、家族を大切にしていないという意味とは限りません。
大切なのは、
- 責めないこと
- 無理に思い出させないこと
- 写真や会話を手がかりにすること
- 家族自身のつらさも大切にすること
です。
記憶が抜けていても、今この瞬間の安心感や関係性を積み重ねていくことはできます。
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