【高次脳機能障害シリーズ】伝導失語とは
2026/05/19
【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害8
伝導失語とは?「あと少しなのに言えない」失語症をわかりやすく解説
-失語症 伝導失語編-
はじめに

「言いたい言葉は分かっているのに、うまく言えない」
「違う、そうじゃない…!」
脳卒中のあと、そんな"もどかしさ"に苦しむ方がいます。
失語症というと、「言葉が出ない」「会話が噛み合わない」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
でも、今回ご紹介する「伝導失語(でんどうしつご)」は、少し特徴が異なります。
話そうとしている内容は分かっている。
相手の話も比較的理解できている。
それなのに、「言葉の音」がうまく並ばない。
あと少しなのに言えない。
言い直そうとすると、さらに崩れてしまう。
そんな特徴を持つ失語症です。
私が作業療法士として病棟で関わっていた頃も、
「違う…違う…あーもうッ!」
「分かってるのに…!」
と、悔しそうに何度も言い直す方を多く見てきました。
今回は、そんな伝導失語について、
- どんな症状なのか
- なぜ言い間違いが起こるのか
- 実生活でどんな困りごとがあるのか
- 家族はどう接すればいいのか
を、生活目線でわかりやすくお伝えしていきます。
まず、少し体験してみてください
次の言葉を、できるだけ早口で3回続けて言ってみてください。
「東京特許許可局」
どうでしょうか。
途中で、音が入れ替わる・言い直したくなる・焦るほど崩れる、という感覚がありませんでしたか?
伝導失語では、このような「音の並びの崩れ」が、普段の会話でも起こることがあります。
しかもご本人は、「違う」「間違えた」と気づいている場合が多いのです。
だからこそ、"あと少しなのに伝わらない"という強いもどかしさにつながります。
伝導失語とは?
伝導失語とは、
「言葉の音の並びがうまくつながりにくくなる失語症」です。
脳卒中などによって、脳の言語ネットワークの一部が障害されることで起こることがあります。
特徴としては、
- 相手の話は比較的理解できる
- 自分でも話そうとする
- でも音が崩れやすい
- 言い間違いや言い直しが増える
といった傾向があります。
他の失語症と比べると、次のような違いがあります。
- ブローカ失語:「言葉そのものが出ない」ことが中心
- ウェルニッケ失語:「会話内容が噛み合いにくい」ことが特徴
- 伝導失語:「言いたい言葉は分かっているのに、音としてうまくまとまらない」
どんな特徴がある?
言い間違い・言い直しが増える

伝導失語では、音の順番が入れ替わったり、似た音に変わったりすることがあります。
例えば、
「テレビ」→「テベリ」
「カレンダー」→「カデレンダー」
のように言ってしまうことがあります。
本人としては正しく言おうとしているため、間違いに気づいて
「違う、違う…」「えっと…」「もう一回…」
と、何度も修正しようとする場面があります。
ただ、焦るほど音が崩れやすくなり、さらに混乱してしまうことがあります。
周囲からは「少し噛んでいるだけ」のように見えることもありますが、本人の中では"ちゃんと伝えたいのに伝わらない"という強いストレスが起きています。
理解は比較的保たれていることがある
伝導失語では、相手の話を比較的理解できている場合があります。
そのため、会話の内容は分かる、言いたいこともある、でも音がまとまらない、という状態になりやすくなります。
だからこそ、「違う」「そうじゃない」という悔しさを本人が強く感じやすいのです。
長い言葉ほど難しくなることがある
短い単語は比較的言いやすくても、長い単語・カタカナ・初めて聞く言葉などで崩れやすくなることがあります。
例えば、「リハビリテーション」「コミュニケーション」「クレジットカード」など。
特に急がされたり緊張したりすると、さらに言いづらくなることがあります。
実生活で起こる困りごと
電話が苦痛になりやすい

電話では、表情・指差し・ジェスチャーが使えません。
そのため「言葉だけ」で伝えなければならず、強い負担になることがあります。
特に「聞き返される」「急かされる」ことで、さらに焦りやすくなります。
注文や症状説明で困る
飲食店や病院などで、「言いたい言葉が出ない」場面が出てくることがあります。
例えば、「カルボナーラ」と言いたいのに音が崩れてしまい、何度も言い直して焦る。
病院では症状をうまく説明できず、疲れ切ってしまう、といったことがあります。
「分かっているのに」が苦しくなる
伝導失語では、"自分で間違いに気づきやすい"という特徴があります。
そのため、「あと少しなのに」「分かってるのに」という悔しさを感じやすくなります。
周囲からは軽く見えても、本人の中では強いストレスになっていることがあります。
本人はどんな気持ち?
伝導失語では、焦り・恥ずかしさ・悔しさ・疲労感を感じやすい方が少なくありません。
特につらいのは、「伝えたい内容は分かっている」からこそ、うまく言えないたびに、
「なんで言えないんだろう」
「前は普通に言えたのに」
と苦しくなりやすいことです。
また、「少し待ってもらえれば言える」こともあるため、途中で遮られるとさらに混乱しやすくなります。
家族が感じやすいこと
ご家族も、「惜しいのに伝わらない」状態に戸惑いやすくなります。
- 何を言いたいのか分かりそうで分からない
- 待った方がいいのか迷う
- つい先回りして言ってしまう
という場面も少なくありません。
ただ、本人は"自分で言いたい"と思っている場合があります。
急いで代わりに言い切ってしまうより、「待つ」ことが大切になる場面があります。
【Note】「ただの噛み間違い」ではないこともある
外から見ると「少し噛んでるだけ」のように見えることがあります。
でも実際には、音を並べる・修正する・正しく言い直すという脳の処理に大きな負担がかかっています。
本人が何度も言い直そうとするのは、"ちゃんと伝えたい"気持ちが強いからこそです。
【Note】歌だと話しやすいこともある
不思議に感じるかもしれませんが、「会話では言いづらいのに、歌だと比較的スムーズ」という方もいます。
歌がリズムやメロディーによって別の脳ネットワークも使いやすくなるためではないか、と考えられています。
そのため、好きな歌・慣れたフレーズ・リズムなどが、コミュニケーションの助けになることもあります。
接し方のポイント
急かさない
返事まで時間がかかることがあります。
途中で急かされると、さらに焦りやすくなります。
「待つこと」も大切なコミュニケーションです。
言い直しを途中で奪わない
本人が修正しようとしている途中で「○○でしょ?」と先回りしすぎると、混乱してしまうことがあります。
サポートは大切ですが、"自分で伝えようとしている"ことも尊重する視点が大切です。
短く、ゆっくり話す
長い説明や複雑な会話は負担になりやすくなります。
短く・ゆっくり・一つずつを意識するだけでも、整理しやすくなることがあります。
ジェスチャーや指差しを使う
言葉だけではなく、指差し・写真・実物・ジェスチャーを組み合わせることで、伝わりやすくなることがあります。
回復・改善の可能性について
伝導失語は、リハビリや環境調整によって改善していく場合があります。
例えば、音読練習・ゆっくり発話する練習・音を区切る練習などを通して、話しやすくなることがあります。
また、「焦らない環境」を作るだけでも、言葉が出やすくなることがあります。
回復のペースは人それぞれです。
だからこそ、"伝わりやすい方法を一緒に探していく"姿勢が大切になります。
まとめ

伝導失語は、"言いたい内容は分かっているのに、音としてうまくまとまらない"失語症です。
そのため、
- 言い間違い
- 言い直し
- 音の崩れ
が起こりやすくなります。
でもその背景には、「ちゃんと伝えたい」という強い気持ちが残っています。
だからこそ、
- 急かさない
- 待つ
- 一緒に整理する
- 言葉以外も活用する
ことが、とても大切になります。
"うまく言えない人"としてではなく、**"伝えづらさを抱えている人"**として関わること。
それが、ご本人の安心につながります。
在宅生活やコミュニケーション支援に悩んでいる方は、ぜひルピネにもご相談ください。
作業療法士として多くの方と関わってきた経験から、一緒に考えさせていただきます。
「言い間違いが増えた」
「あと少しなのに言えない」
「本人がとても焦っている」
そんな時、ご本人もご家族も強いストレスを抱えやすくなります。
ルピネでは、作業療法士としての経験をもとに、失語症や高次脳機能障害による“伝わりづらさ”について、一緒に整理しながらサポートを行っています。
「どう接したらいい?」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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