【セラピストって?】理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違い【リハビリ】
きっと、病院や施設のリハビリセラピスト達の多くは、
「『マッサージ=リハビリ』 ではない!」
と声高らかに言いたいと思っているに違いない!
元病院勤務の作業療法士の私はそう思っています。
はじめに
リハビリ
世の中にはいろんなところで「リハビリ」という言葉が使われていますが、
ここでは「病院や施設で働くリハビリテーションのスタッフが行うリハビリ」に限定して
お話させていただきます。
セラピスト
同じように「セラピスト(Therapist)」も、
「アロマセラピスト」とか「カラーセラピスト」など様々な種類があるようですが、
セラピストとは「セラピー(治療・療法)」を行う人のことを言います。
ここでは病院や施設でリハビリを行うために
- 理学療法士(PT:Physical Therapist)
- 作業療法士(OT:Occupational Therapist)
- 言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)
という、国家資格のある医療従事者としての
リハビリスタッフに限定したセラピストのお話をさせていただきます。
リハビリの目的
「リハビリってマッサージでしょ?」
病院で仕事をしていると
そう言う患者さまがいらっしゃいます。
マッサージをしているように見えることもあるかもしれません。
でも「リハビリ=マッサージ」ではないんです。
リハビリは「 Re(リ) + Habilitation(ハビリテーション) 」という
ラテン語が由来で、「再びその人らしく」という意味です。
総じて、医療・介護の業界では病気や怪我などで
「失ってしまったその人の能力をもう一度取り戻す」
という目的でリハビリをします。
リハビリは「元の状態にできるかぎり近づける」という目的もありますが、
それができないことも多々あります。
例えば
「切断してしまった足をもとに戻す」とか
「100歳の方をリハビリでフルマラソンを走れるようにする」とかは
無理だということは想像するのに難しくないと思います。
しかし、
義足を使って歩けるように練習したり、
100歳でも2時間ぐらい車に乗っていられる体力を
つけたりすることはできるかもしれません。
このように、その人の体をもとに戻す。
それができなくても何らかの方法で、
「やりたいこと」を実現できるようにするということが
リハビリの本来の目的になります。
3種類のセラピスト
総合病院のリハビリテーション科に行くと
大抵3種類のセラピスト(リハビリスタッフ)がいます。
- 理学療法士(PT)
- 作業療法士(OT)
- 言語聴覚士(ST)
それぞれの分野のセラピストが、
医師の指示のもとで患者さんにリハビリをしていきます。
では、この3種類のセラピストの違いは何でしょうか。
①理学療法士(PT:Physical Therapist)
理学療法士の定義
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって
運動機能が低下した状態にある人々に対し、
運動機能の維持・改善を目的に
運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。
出典:公益社団法人 日本理学療法士協会 2020/12/13時点
身体に障害のある者に対し、
主としてその基本的動作能力の回復を図るため、
治療体操その他の運動を行なわせ、
及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
出典:厚生労働省
ドラマでよく見る「リハビリの先生」が足をストレッチしていたり、
歩く練習をしている場面のイメージは、この理学療法士かもしれません。
何れにせよ、マッサージやストレッチ、運動指導、
機械などを使った物理療法などを駆使し、
病気や怪我などを解剖学や運動学などの知識を基礎とした治療を行い、
起き上がる・立つ・歩くなどの基本的な動作を中心に
機能改善やもとの生活に戻るための能力を身につけてもらえるように関わります。
②作業療法士(OT:Occupational Therapist)
作業療法士の定義
作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、
医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、
作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。
作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。
出典:一般社団法人 日本作業療法士協会 2020/12/13時点
身体又は精神に障害のある者に対し、
主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、
手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
出典:厚生労働省 2020/12/13時点
人間が生活するにはとても複雑な思考や複雑な動作が必要です。
その複雑な思考や動作が「作業」です。
あなたは今日「着替え」をしましたね?
あなたが何気なくおこなっている日常動作ですが、
頭ではとても複雑なことをしていますし、身体も複雑な制御をしています。
その人の生活をする上で必要な活動が「作業」で、
身だしなみなどの自分のケアや、仕事、そして趣味活動などが、
再びできるようにお手伝いします。
理学療法で訓練した基本的な動作を基礎として、
トイレ動作や調理、買い物などの応用的な動作につなげていきます。
このように理学療法と作業療法は密接に関わっているため、
治療アプローチが異なることはあっても、
患者様の状態は同じように分析することができ、
連携をしながらリハビリを提供していきます。
③言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)
言語聴覚士の定義
音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある人々に対して、
その機能の維持向上を図るため、
言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、
指導その他の援助を行うことを業とする者をいうものをいう。
出典:厚生労働省 2020/12/13時点
老化現象の一つの筋力の低下があります。
そして食べたり飲んだりするための筋力も例外ではありません。
口や喉などの筋力低下や麻痺などでうまく食事ができなくなる嚥下障害や
声をうまく出せない構音障害、そして言葉を上手に使えなくなるような言語障害などは
言語聴覚士の専門分野で、摂食/コミュニケーション全般のアプローチを行います。
また、記憶障害などの高次脳機能障害は作業活動にも影響するため、
作業療法士と連携しながらリハビリを提供していきます。
この3つをリハビリテーションと言いますが、
私は、3つのリハビリ時間だけが「リハビリ」でなく、
入院中の病棟での時間や在宅での自分の時間で、
安全な範囲で自分でできることを自分ですることも
含めてリハビリだと考えています。
まとめ
理学療法士は運動機能の改善、
作業療法士は作業活動状況の改善、
言語聴覚士は飲み込みやコミュニケーションの改善
を得意としています。
その方の今後の生活をより良いものにするために、
それぞれのセラピストが連携しながら治療をしていきます。
セラピストがいくら頑張っても、
患者さんもがんばってくれなければなかなか改善しにくいものです。
リハビリはご本人さまと3種類のセラピストが力を合わせて
できることを増やし、元のあるべき生活を目指していく治療です。
マッサージは一時的な効果であり、
ご本人さまが自ら動いて練習することこそが、
あなたの「やりたいこと」を実現するために大切なことです。