【介護保険外サービス】ルピネを始めようと思ったきっかけ その1【ちょい旅サポート ルピネ】
はじめに
私は、病院で作業療法士という仕事をしていました。
作業療法士とは、主に病院や施設でリハビリを行う職業の一つです。
リハビリは「起き上がる・立ち上がる・歩くなどの基本動作に関与」します。
その中でも作業療法士は、生活をするうえで必要な
「食べる・服を着る・トイレに行くなどの日常生活動作」や
「仕事・遊びに参加できるよう、応用動作と社会適応に関与」します。
私が10年の間に経験した患者さまとのいくつもの関わりの中から
ちょい旅サポート ルピネを始めたきっかけの一つとなった貴重な体験をお話します。
リハビリへの意欲がなかなか上がらない
伊藤さん(仮名)は、大腿骨の骨折(足の付根の骨)の手術後でした。
70歳代と言っても見た目は年齢よりも若々しい女性です。
大腿骨の骨折は長くて約3ヶ月という期限で、
回復期リハビリテーション病棟に入院してリハビリすることができます。
(リハビリをした上でこれ以上の改善が見込まれない、
当初の目標に到達したなどの場合、退院が早まることもあります)
リハビリを目的とする入院生活では、
退院に向けて自分でやれることをどんどん増やしていかなければなりません。
しかし彼女は、スタッフがなんでもやってくれる病棟の環境に慣れて、
痛みが引いて自分でできることまでもやってもらう依存的な入院生活になってしまいました。
「入院しているから患者になってしまった」のです。
入院当初の若々しかった表情も年齢相応に見えます。
しかし彼女は
「家に帰ったらできるから。家に帰ってしまいさえすれば、元通りの生活になる」
とおっしゃっていました。
彼女は、ベッドから自力で起き上がれるのに「起こしてください」と両手を伸ばします。
歩行は、歩行器を使用すれば近くから見守れば安全に歩行できるレベル。
つまり、なにかに掴まってゆっくりとすすめるが、足がガクガクして転びそうという状態です。
そしてたびたび「もうやらない。もうやだ」と、リハビリを拒否しました。
「家に帰れば元通りの生活に戻れる」方ばかりではない
リハビリを開始して1ヶ月を過ぎた頃
伊藤さんのご家族が来院されリハビリを見学されました。
そこで依存的な伊藤さんを見たご家族に
「こんなんじゃ家に連れて帰れないわ」
と言われてしまいます。
伊藤さんは最初「そんなことない!」と怒っていましたが、
相当ショックを受けていたようでした。
そうして励ましながらリハビリを続けて数日が経った頃から、
少しずつ自分で出来ることは自分でやろうとするようになってきました。
「せめてトイレは自分で行けるようにならないとね!」と言いながら、リハビリをも頑張りました。
結果的に退院時には、病院の敷地内の外周も補助的に杖を携え
なにも使わずに歩けるようになっていました。
振り向いたときにバランスを崩して転びそうになることがあるので万が一に備えて見守りは必要でしたが、
時々街で見る杖歩行の高齢者の中でもしっかりとした部類の歩行に見えました。
そうして笑顔で退院していきました。
ここで話が終わればハッピーエンドかもしれません。
しかし、この話にはちょっとだけ続きがあります。