【生活期】わたしが経験した維持期・慢性期の治療(心不全と合併症)その2【リハビリ】
※こちらの記事は「【生活期】わたしが経験した維持期・慢性期の治療(心不全と合併症)その1【リハビリ】」の続きです。
わたしは病棟の看護師に彼女の話をしました。
そうすると病棟看護師は
「外出すればいいのにねぇ。
ドクターからは許可出るのに」と。
「マジで?!」
医師の外出許可が降りるなら
あとは本人と家族の問題しかありません。
そしてある日彼女に思い切って聞いてみました。
「どっか行ってみたい?」
彼女は少し困った顔をしながら
「そりゃ家に帰りたいけど、こんな身体だからねー」
と答えました。
「実際に帰るかどうかは別にして一回家に行ってみません?
行ってみて、できなかったら『できない』ってわかるし
できたら『いつでも帰ることもできる』って分かる。
選択肢が増えることはいいことじゃない?」
このとき、彼女は一瞬「ハッ」とした表情をしてはいましたが
現実的ではないと思い直したのか曖昧な返答でした。
リハビリスタッフであるわたしは
バリアフリー環境と旦那さんの介助があれば
リハビリでもう少しだけ動作を安定させれば実現可能だと考えていました。
しかし彼女は体力的な不安で行けないと思っているようでした。
そこでわたしは
「ダメ元でもいいから、『家に帰る』を目標にリハビリプログラムを変えてやってみませんか?」
と切り出しました。
彼女の了承を得ると
まずは自信と体力をつけるために立位時間の延長からはじめました。
自分の足と腰を信用していない彼女は
手すりから両手を放すことができなかったので
両手にしっかりと体重を乗せた状態での立位です。
それでも5秒がギリギリだった最初から3ヶ月後には
10秒になり30秒になり、そして1分になりました。
心筋症は負荷をかけすぎると悪化してしまうので
あまり無理はさせられません。
そこで今度は「3歩だけでいいから」と
つかまり立ちのまま横歩きの訓練をはじめました。
ところで彼女はリハビリ訓練の動きによって
ズボンの裾が上がることが嫌いでした。
だからリハビリ終了時には必ずつかまり立ちをして
「ズボン直して」
とわたしにズボンを下げて裾の位置を直すよう依頼していました。
ところがある日
リハビリ訓練が終わってわたしが訓練道具を片付けて振り向くと
彼女は自分で立って両手でズボンを直してストンと座りました。
「上田さん・・・、いま両手放して自分の足で立ってたよね!!」
そう声をかけると彼女は固まり、驚いた表情になりました。
「・・・ほんとだ。今わたし、自分で立ってズボン直してたよね?!」
「気づいてなかったんかい!」とツッコミましたが
仲のいいリハビリ受付のスタッフとも一緒に喜びました。
こうして少しずつ彼女は自信をつけていきました。