【自己効力感の低下】私の回復期リハビリ病棟看護師の回顧録からいまへ その3【病院の当たり前】
※こちらの記事は「【思っていたのとは違う!?】私の回復期リハビリ病棟看護師の回顧録からいまへ その2【退院後の生活】」の続きです。
厚生労働省の閉じこもり予防・支援マニュアルでは
閉じこもりとなる要因に
「ADLに対する自己効力感の低さ」などがあげられています。
「ADLに対する自己効力感の低下」とは、
この研究では「入浴をする」「簡単な掃除をする」などの項目に
どのくらい自信をもってできるかというという質問によって得られた結果です。
退院する時には「退院に不安はない」「もう大丈夫」という言葉も聞かれたはずなのに・・・
入院中は自信をもってできていた動作が思うようにできない理由を
自分なりに考えてみました。
- 病院と家との環境の違い(病院は上がり框もない、ドアの開閉はトイレ以外ほぼない、段差がない、絨毯・畳・フローリングが混在していないなど)
- 入院生活も病院から食事が当たり前のように3食配膳される。
- 入浴も浴槽にお湯がたまっている状態で入るだけ・・・
生活の一場面だけを考えただけでも準備や片付け、掃除など
家では必ず伴う動作を行う機会が少なく、想定以上に疲労したり、
退院してからの元の生活に自信の喪失を感じる場面が多いのではないかと思います。
いくつかできない場面に遭遇すると、
そのことばかりに目が向き、できることには目が向きにくくなり、
不安によって生活し慣れた家の中だけに生活環境が狭まってしまいます。
見守るご家族も同じように落ち込んでしまう
退院前に考えていたより介護力が求められる場面が増え
培ってきた生活パターンの変容を求められることも考えられます。
私もそんなことはわかりそうなものなのに、いざ病院にいると気が付かない。
長期に入院する患者さんが病院の生活に慣れるように、
私自身も〈病院の当たり前〉に慣れすぎていた。
帰宅すれば皆さんと同じように家事をして生活をしているのに、
どこかで切り離し考えていました。
これでは本当に自宅退院に向けて頑張っていたことはどこまで通用したのだろう?
退院後の楽しみは?
もちろん、歩く、食べるなどの基本動作はすべての生活に影響し、
またそれらの部分を集中的にリハビリしていくことが必要な時期があります。
しかし、退院した患者さんたちの現状から
退院した後の生活の中でのリハビリの大切さを実感しました。
ですがその反面、私は
よりよく生きるためにリハビリをするのであって、
リハビリをするために生きている人はいない
と考えています。
病院と同じようにリハビリをするのではなく
「自分でしたいことをする」ということを大前提とし、
それに伴走するように動きや道具の工夫、時には直接的な介助も必要だと考えます。
それは病院内でのリハビリとは違い、
趣味や家事などの生活、美容室で身なりを整えるなどの生活の中で
その人がその人らしく楽しくいきることと密接するものだと思います。
病院では医師、リハビリスタッフや看護師、介護士、栄養士、相談員などが
一生懸命患者さんのために働いています。
しかし、病院にいては手の届きにくい生活の中でも病棟でできたはずの動作をリンクする関わりや、
患者さんの生活の楽しみを支える関わりなど
それぞれの場面で役割をもつことが今後求められていると考えています。