【同じ病気でやることが異なる理由】セラピストの頭の中 その2【リハビリ】
こんにちは。ちょい旅サポートルピネの作業療法士です。
このブログは「セラピストの頭の中 その1」の続きになります。
その1をご覧になっていない方はそちらからお読みいただくと、
なんでこんなことになっているのかお分かりいただけると思います。
【同じ病気でやることが異なる理由】セラピストの頭の中 その1【リハビリ】
ゴールはどのように設定しているの?
日本の制度によって病院には入院期限が設けられています。(一部の疾患・一部の病棟を除く)
効率よくリハビリを提供し、可能な限り良い状態で退院できるよう
医療チーム全体でその患者さまに対するゴールを設定し共有します。
たくさんあるとお話したゴールの設定のための要因を大きく分けて5つあげてみます。
要因1:患者さまの病気・怪我の状況や痛みの程度・回復状況
人によって同じ部分の骨折でも、骨折形状が違ったり痛みの程度が違ったりします。
個人の栄養状態の違いも回復スピードに影響します。
中には医者から「これはやってはだめ(禁忌)」という指示もあります。
体の状態の良い方は積極的なリハビリで早期の能力向上が期待できます。
そうではない方は、体に合わせた低負荷なリハビリから
徐々にレベルアップしていきます。
要因2:患者さまの能力
怪我する前の筋力・体力の違いが影響します。
高齢のため怪我する前から筋力が少ない場合や
心臓や呼吸器の病気をお持ちの方の場合は、
立っているだけで息切れをしてフラフラする方もいらっしゃいます。
そういう方のリハビリはゆっくりと進めるでしょう。
また、ご本人のリハビリへのモチベーションも大きく関係するようです。
要因3:退院先の環境や患者さまのご家族の生活状況
退院先の自宅がバリアフリーで家族が家事全般もやるというご家庭もあれば、
高齢で独居のため全部自分でやらなければならない方もいらっしゃいます。
退院先で必要となる能力が人によって異なるため、
その方の生活に必要な能力が、優先的に再獲得できるために重要なリハビリ内容
から行っていきます。
またどうしてもできるようにならない場合は、
装具や道具を使ってできるように練習したり、
家自体を改修したりヘルパーを利用するなど、
他の手段を提案することもあります。
要因4:それぞれのセラピストやチームの考え方
チームとは、その患者さまを担当する
医者・看護師・セラピスト(リハビリスタッフ)・ソーシャルワーカー・栄養士のことです。
病院では定期的にチームが集まって、患者さまの情報を共有しながら全体のゴールを考えたり対応方法を変更したりし、チーム全体が一貫性のある関わりができるようにしています。
患者さまも医療従事者も人間ですから、
「患者さまにとって重要なことはなんだろう」
「この方にとって到達できそうな最高のゴールはなんだろう」
と考えたとき、算数みたいに「1+1=2」というかっちりした答えは出ません。
当然それぞれの考え方がありますので、時には意見がぶつかりながら、
みんな真剣に患者さまの最善を模索していきます。
要因5:ご本人の希望・思い
私はこの「要因5」が一番重要だと思っていますし
他の多くの医療従事者も同じ考えだと思います。
殆どの方は「怪我する前の状態に戻りたい!」というのが本音ですよね。
私たちはできるかぎり元の状態に近づけるように尽力します。
が、それでも限界があるのも現実です。
そこで医療従事者はご本人やご家族に、具体的にどうなりたいかを尋ねます。
ご本人の「トイレだけはなんとか自分で済ませるようになりたい」とか、
ご家族の「母さんの日課だった仏壇へのお供えができるようになってほしい」などの希望から、
その動作が安全にできるようにリハビリを考えていきます。
これらの要因を総合して患者さまへの関わり方やリハビリの内容を決めています。
結局何て説明したの?
「同じ骨折でも、痛みの強さとか年齢とか体力とかも違いますからねー。
それに合わせてリハビリを考えているんですよ。
榎本さんの場合、家に帰ったらご飯支度、掃除、洗濯を自分でするんですよね。
でも後ろに転びやすいからこういうリハビリをしてるんですよー」
と、説明しました。
そしたら彼女は目を見開いて、オーバーリアクションでこう言いました。
「それであの人、実はお金持ちなんだって!
息子さんが◯◯の社長さんだって!いいわよねー。
それでねあの人、看護婦さんから『ひとりで立っちゃだめ』って言われてるのに
ゆうべ一人でトイレ行ってたんだからー。ここだけの話ね!」
「・・・・・・?」
え?
もしかしてすでに別の話題になってる?!
彼女にとって大して聞きたい質問ではなかったようです(^_^;)
それと、こうして患者さまから別の患者さまの個人情報が漏れていきます。
リハビリは長時間に渡りマンツーマンで行うことが多いので、
患者さまはこういう日常会話がポロッと出てきやすいのかもしれませんね。
もちろん基本的に個人情報は漏らしませんが
「一人でトイレ行ったらしい」
という怪我に直結するような情報だけは
病棟の看護師に漏れちゃうことがあります(笑)
・・・しょうがないよね。