【生活期】わたしが経験した維持期・慢性期の治療(心不全と合併症)その1【リハビリ】
はじめに
今回は、わたしが作業療法士として障害者病棟の患者さまの
リハビリ担当をしていたときの経験をお話しようと思います。
長期入院されており自宅へ外出できるとは
想像もしていなかった方の事例です。
背景
(個人情報が特定されないように、仮名と一部フィクションを交えています)
患者さまは上田さん(仮名)という当時50代の女性でした。
彼女にはペースメーカーが入っています。
ペースメーカーとは
不整脈の一種で徐脈といって脈が遅くなる状態の時に
電気を流すことで心臓が拍動するようにする埋め込み装置です。
しかしペースメーカーを入れれば
「もう安心」とはいかないこともあります。
彼女の病気は心筋症という特定疾患の難病で、
心臓の筋肉の異常により
血液を送るという心臓の機能が十分果たせなくなる病気です。
ペースメーカーは拍動のタイミングを
電気刺激で心臓に教えてくれるだけで
全身に血液を送れるのは
心臓の筋肉がまだしっかりと収縮する力があるからです。
いくらペースメーカーが電気刺激を送っても
筋肉が収縮する力を発揮できなければ心臓は拍動しません。
彼女は全身に十分な血液を送ることができず、
足がむくみやすい、
トイレに行くために車椅子に移るだけでも息切れがある、
などの症状がありました。
彼女は障害者病棟に何年も入院しています。
障害者病棟とは重度の障害者や難病患者に対して
長期治療および手厚いケアをするための専門病棟です。
週1回ずつ理学療法と作業療法のリハビリをしていました。
彼女が病院の外に出るときといえば
旦那さんに付き添ってもらって
町の眼科や循環器病院の受診に行くときぐらいでした。
長期入院の上田さんは
リハビリスタッフと話をするのを楽しみにしており
わたしはいつも雑談をしながらリハビリをしていました。
リハビリプログラムは
- 病棟からリハビリ室まで車椅子を足で漕いで自走してくる
- リハビリ室で全身の軽い運動
- ストレス発散のための雑作業
でした。
雑作業とは頭の体操だったりアクティビティだったり
その日によって二人で話し合って決めていました。
わたしの前担当からずっと同じプログラムでした。
そうしながらも
「このままだとずっとこの病院から出られず
ここで最後を迎える。
この人はそれでいいのだろうか。
何が望みなんだろう」
と思っていました。
彼女との雑談の中に時折
「あそこの蕎麦はうまかった」とか
「あそこにもっかい(もう1回)行きたいなー」
とかいう会話が飛んできます。
わたしは
「本当は外出したいんだろうな」
と感じていました。