【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害
 -これから高次脳機能障害を知っていきたい方へ-【在宅介護】

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【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害
 -これから高次脳機能障害を知っていきたい方へ-【在宅介護】

ご家族が突然「高次脳機能障害」と言われたら

親御さんやご家族あるいは職場の方などの身近な方が、頭の怪我や病気で入院したあと、

「あれ?なんか以前と違う」

と感じることはありませんか?

 

「高次脳機能障害ってなに?どんなことに困るの?」

「治るの?」

「『頑張れ』って言っていいの?」

「本人も困るんだろうけど、その家族はどんなことに困るの?」

  
身近な人が高次脳機能障害となった場合の疑問にお答えします。

   

本記事の内容

  • 高次脳機能障害について初心者向けにわかりやすく、だけど少し詳しくまとめてみました
  • どんなことに困るのか?どのような生活になるのか?
  • 高次脳機能障害の方と関わる方にワンポイント

 
さまざまな原因で脳にダメージを受け、入院している患者様がいらっしゃいます。そしてその中には、高次脳機能障害という『頭で処理する機能』の一部に不具合が発生し、入院中や退院してからも日々リハビリを続けている方も少なくありません。

私自身も作業療法士として10年ほど多くの高次脳機能障害の方をリハビリしてきました。私の経験したことも合わせてお話していきます。知ることで、今の症状に納得ができ気持ちが少し楽になることもあると思います。よかったら最後まで読んでいただけると嬉しいです。

     

高次脳機能障害ってなに?どうなるの?

 
ちょい旅サポート ルピネ
 

「高次脳機能障害ってよくわからないよねー」
症状が直接見えないから難しい」
「性格が変わった。怒りっぽくなった」
わがままなだけなんじゃないの?」

私が作業療法士として病院で働いていた頃は、看護師や他のリハビリスタッフ、そして患者様のご家族などからも度々質問される内容の一つが高次脳機能障害でした。高次脳機能障害は、医療従事者からみても難解な分野と言えるかもしれません。

病気の症状は一般的に『出血している』『身体が動かない』『吐き気がする』『痛い』など、異常が目に見えることが多いのですが、高次脳機能障害の主症状の多くは『行動や発言になんとなく違和感がある』というものであり、直接見えるものではありません。『見えない障害』とも呼ばれ、それが理解しにくい理由の一つで、病気や症状について誤解されている方も多いようです。

ここでは、その高次脳機能障害をわかりやすく説明していきたいと思います。

   

高次脳機能とは

脳の役割

私たち動物は、頭の中に1つの脳が入っています。
脳の機能は3つ。

1つ目は、感覚機能。外の情報を取り込む機能で、視・聴・嗅・味・触のいわゆる五感というものです。例えば、『目』から入ってきた視覚情報を脳に取り込んで自分と他の物の位置関係を把握しますし、『耳』から入ってきた聴覚情報は自分の周りの空気の振動を音として把握することができます。その他、手の感覚や足の感覚、エレベータに乗ったときに身体が浮くような感覚などです。

2つ目は、運動機能。自分の体を動かす機能です。手を動かしたかったら、脳がそう動くように各筋肉へ命令を出します。おしゃべりをしたかったら、脳がその言葉になるように喉や口の筋肉へ命令を出します。

3つ目が、高次脳機能。これは上記2つ以外の機能を言います。知覚、記憶、学習、思考、判断・感情などの機能で、簡単に言うと『考える』とか『覚える』など、いろんな複雑なことができます。
例えば、下の写真には何が写っていますか?
ちょい旅サポート ルピネ
すべての物が重なっていて、どれも全体が見えているものはありません。それでもあなたはこれが本だということを確信しているでしょう。一部分しか見えていない物を「これは本だ」と予測できるのは高次脳機能のおかげです。

  

脳は各部位によって機能が決まっている

脳には約50の住所があって、それぞれに決まった機能があります。
足を動かす機能、指先の感覚を感じる機能、目を覚ます(覚醒)機能、図形を理解する機能、言葉を理解する機能、言葉を話す機能、計算する機能、記憶する機能、考えをまとめる機能、感情をコントロールする機能などに分かれています。

それぞれの機能がお互いに連絡しあうことで、一つの脳として働いているのです。

  

高次脳機能障害とは

脳の仕組みをもう少しわかりやすくイメージしてみましょう。

脳をスマホに置き換えて考えてみるとわかりやすいかもしれません。
あなたがお持ちのスマホは『電源ボタン』『音量ボタン』『スピーカー』『画面(ディスプレイ)』『カメラ』『バッテリー』『通信アンテナ』など、それぞれの機能の部品がたくさん集まって出来ています。

例えば、『電源ボタン』が壊れてしまったらどうなるでしょうか。きっともうスマホはずっと寝たままで、電源ボタンを押しても起きてはくれないでしょう。

もし『スピーカー』が壊れてしまったら、音は出せないですがそれ以外の機能は使うことができるかもしれません。スピーカーから音を出して伝えることは出来ないけど、ディスプレイに表示することで情報を伝えられます。あたかも、ジェスチャーでコミュニケーションをとるのと似ています。

また『通信アンテナ』が壊れてしまったらどうでしょう。通信はできないけれど、きっとスマホの電卓機能やカメラ機能は使えますよね。

一部機能が障害されたスマホと同じように、脳もそれぞれの機能のどこがどの程度ダメージを受けるかによって現れる症状が異なります

   

高次脳機能障害になる原因

この記事では各病気(疾患)の詳細については触れませんが、下記のような病気や怪我は頭の中で出血したり、脳が酸欠になったり、脳が圧迫されたりすることで脳がダメージを受け高次脳機能障害を起こしてしまう可能性があります。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • くも膜下出血
  • 脳腫瘍
  • 低酸素脳症・アルコール性脳症・脳炎
  • 脳血管性認知症
  • 交通事故・スポーツ外傷などの頭部損傷
  • 水頭症(適切な治療で高次脳機能障害の症状は消失します) など

   

高次脳機能障害の症状と困ること

障害の症状によって直接困ること

高次脳機能障害の症状は、たくさんある脳の機能でどの部分どの程度ダメージを受けるかによって様々です。

感情をコントロールする機能が損傷すると、悲しくもないのにちょっとした刺激で泣いてしまったり、逆に怒りっぽくなったりする方もいらっしゃいます。また、言語機能が損傷すると言葉を発せなくなったり、誰かが話している言葉を理解できなくなってしまったり、読み書きができなくなってしまうことがあります。
環境が整っている入院生活ではとくに問題なく過ごしていても、いざ退院して普段の生活に戻ってから初めて表在化する高次脳機能障害もあります。

脳は約50の機能が上手に連携し合っています。その一部の機能がうまく動かなくなったり連携ができなくなることで出てくる症状は様々で、日常生活で困ることも人それぞれです。

それぞれの高次脳機能障害の症状についての詳しい説明は、次回以降の記事にしていく予定です。ここでは私が病院でリハビリをしていたときの患者様を例にしてお話してみましょう。
(個人情報が特定されないように、一部フィクションを交えています)

 

Case1:意欲低下
もともと徘徊行動があるご高齢の重度の認知症の方で、しょっちゅう徘徊をし家を出てしまうため、ご家族は探し回る日々で苦労されていました。

ある日、ぼーっとしており普段と様子が違うことから病院に連れて行ったところ、脳梗塞と診断されました。この方の後遺症としてモチベーションが上がらない意欲低下という高次脳機能障害を呈してしまいました。

ご本人は認知症によりご自身の状況はあまり把握できていないようですが、意欲低下によって自分から動こうとすることが減ることで徘徊行動はなくなり、ご家族の負担は軽減されたようでした。

重度の認知症であるご本人の希望を聞くことができませんでしたが、介護をするご家族のストレスが減る場合もあって、このようなケースではあまり問題にはならないこともあります。

同じ意欲低下でも若い方の場合は、生活への悪影響として問題が現れるかもしれません。

 

Case2:注意障害
25歳の女性。ある休日の夜、職場の友人とお酒を飲んでいると激しい頭痛に襲われました。

友人による119番通報で救急病院に搬送され、クモ膜下出血との診断で緊急手術となりました。入院中、一生懸命リハビリをして徐々に回復していきました。しかし、注意障害という集中力が極端に下がってしまう高次脳機能障害が残ってしまいました。

職場復帰してからは、周りの人から「がんばれ」と言われ、彼女の脳も一生懸命がんばっていました。それでも書類などのケアレスミス(見落とし)が多く、職場の一部の人には怠けているように見えていたようです。集中力が続かないので、車の運転も諦めなければなりませんでした。

仕事復帰する際には職場の方の理解も必要ですし、会社の業務に差し支える場合もあります。可能なら、その方に合った業務内容に切り替えてもらったり、状態を見ながら業務の難易度を徐々に上げていったりします。

次は上手に高次脳機能障害の症状に対応したケースをご紹介します。

 

Case3:地誌的障害
30歳の男性。ある日交通事故でバイクから転倒、腕と胸を骨折し、入院となりました。数ヶ月リハビリをして、骨折も順調に回復していきました。

退院し職場復帰しようとしたところ、バイクで通い慣れたはずの数キロ先の職場への道で迷いました。そこで初めて「あれ?オレ変だ」と違和感を持ちます。その日は家族と職場に連絡して迎えに来てもらうことで事なきを得ました。

しかし翌日も翌々日も同じことが続いたため病院で検査をしたところ、地誌的障害という高次脳機能障害が残存していることが判明しました。これは頭の中で地図が正しく描けなかったり、目の前の風景と地図との関係性が理解できなかったりすることで生じます。彼は事故の際に頭部をぶつけており、遅れて症状が現れていたようでした。
この日から彼は毎日スマホナビのルート案内機能を使用して、通い慣れた職場へ通っています。

こちらはナビという道具を利用して、障害された脳の機能を補えた例です。

このように高次脳機能障害の方のバリアフリーとは、周りの方の理解その方に合った生活環境や仕事内容や道具、そしてサポート体制で得られる部分も大きいといえます。

  

障害の症状によって二次的に困ること

高次脳機能障害は『見えない障害』とも言われており一見して健常者に見えるものの、介助を必要とするケースも多く見られます。

また、脳の障害のためご本人が自覚しにくいという側面があります。
私たちも自分の癖をすべて把握している人は稀でしょう。障害されていなくとも自分自身のことを常に客観的に意識することは難しいものです。日常生活でいろんな失敗を繰り返し経験して、

「あれ?自分、また失敗した?」

と思うことで、障害を自覚できるようになる方も多くいらっしゃいます。失敗を繰り返す時期や障害を自覚する時期は精神的にかなりのストレスかと思います。

またそんな当事者の介護者のストレスも軽くはありません。生活上で必要なかかりきりの介助時間手探りの介助方法経済面での不安相談できる人がいない周囲の人からの障害に対する誤解などが介助者の負担としてのしかかってきます。

     

高次脳機能障害になった場合の生活について

ちょい旅サポート ルピネ

高次脳機能障害は治るのか?

回復の度合いは、怪我の程度適切なリハビリ、そして個人差によるところが大きいというのが現状です。

脳にダメージを受けた直後は、脳が腫れて圧迫されます。神経の集まりである脳は、圧迫されると正しく機能しなくなり、様々な高次脳機能障害が出やすい傾向にあります。しかし入院し早めに治療を開始してリハビリをすることで、脳の腫れが引いてきて高次脳機能障害が少しずつ消失していきます。

ただし、圧迫などの間接的なダメージではなく、出血や酸素不足による直接的なダメージを受けた部分については完全な回復が難しい場合もあります。その部分が体を動かす機能の場合であれば麻痺が残りますし、高次脳機能の場合であればその高次脳機能障害が残ってしまうかもしれません。

それでもリハビリを続けることで、別の神経がダメージを受けた神経の代わりに機能してくれることがわかっています。リハビリによって脳機能が改善する可能性があるのです。
(橋本 圭司(2013).『なるほど高次脳機能障害―誰にもおきる見えない障害』.クリエイツかもがわ)

そのためリハビリを続けて、少しずつできることを増やしていきます。

   

退院して家に帰れるのか?家族の生活には影響があるのか?

先程のCase1のように、環境によっては高次脳機能障害が残存してもあまり影響がない場合もあります。(本人にとっては辛いかもしれませんので問題がないわけではないのですが、生活する上での問題は少ないという意味です)

また、高次脳機能障害によって感情のコントロールが難しくなり、怒鳴ったり暴力を振るうようになってしまった方も、気持ちを落ち着けるためのお薬でコントロールし、自宅の生活に戻られた方もいらっしゃいます。

自宅に戻れるように病院スタッフやご本人・ご家族が相談し合い、ご本人とご家族に合った方法を見つけることで、在宅生活が現実的なものになってくるのだと思います。

     

高次脳機能障害の方と関わる方へワンポイント

ちょい旅サポート ルピネ

ご家族の心構え

身体障害として麻痺があったり杖を使っているなど、周りの人が見ても障害と分かる場合は理解や手助けを得られることも多いと思います。しかし「見えない障害」である高次脳機能障害は、違和感のある行動としてしか症状が現れにくく、周りの人も理解が難しいため、当事者やそのご家族は辛い経験をしていることもよく耳にします。

脳の障害なので、高次脳機能障害を自覚ができず『病前と同じように行動している』と思っている方もいらっしゃいます。そんな状況で周りの人から変な人扱いされたり注意されたりすると、気分が落ち込みうつ状態になったり、ストレスから怒りなどの攻撃行動につながるかもしれません。

リハビリでも、まずは『本人が高次脳機能障害を自覚できるようにする』というところから開始することが多く、自覚することで自分で対応できることが増えますし、周りの人からの奇異の目で見られるストレスも軽減できるかもしれません。

なにより、ご家族や身近な方には、高次脳機能障害についてご理解して接してもらうことがお互いにうまく生活できるコツだと感じます。そのためには、まず高次脳機能障害が残存してしまった方のご家族が、障害についてよく理解することが大切だと思います。

   

「頑張れ」という言葉

脳のダメージを受けた部分はうまく機能しなくなることで、周りのダメージを受けていない脳が代わりに一生懸命頑張ってくれています。

でも代わりに働いている部分は本来の機能ではないので、やはり早くは出来ないしミスもします。失敗したり遅いからといって、本人が手を抜いているわけではありません。周りの人には、ボーッとしていたり、やる気がないように見えても、頭の中では限界まで電気信号が走りまくっています。

1969年に月面着陸したアポロ11号に搭載されているコンピュータはファミコンよりも性能が低かったといいます。当時からすると、今あなたが手にしているスマホだってスーパーコンピュータ以上にすごい性能です。そのスマホが正常に機能せずファミコンぐらいの速度になったと思ってください。スマホでは1秒もかからない簡単な計算でも、ファミコンでは何分もかかります。だからといってファミコンはだらけているわけではなく、一生懸命計算をしています。

高次脳機能障害を持つ方の脳も同じようにフル回転しています。しかも機能が障害しているため、健常な私たちの何倍も集中しなければなりません。だから疲れやすくもなります。私のリハビリの時間はそれを理解した上で、時と状況に応じて「もう少しだから頑張って」とか「今日はもう無理しなくていいですよ」などかける言葉を選ぶようにしていました。

     

おわりに

ちょい旅サポート ルピネ
高次脳機能障害の症状は、周囲の人には一見してそれと分からず、違和感で感じ取られることが多いものです。

身体障害の場合はバリアフリーやユニバーサルデザインが浸透してきて、わたしたち自身の知識も環境も少しずつではありますが整ってきています。それと比較して、高次脳機能障害へのバリアフリーはまだまだ浸透しているとは言い難い状況です。

高次脳機能障害が理解しにくいものであるから「だらけているだけなんじゃないの?」とか「なんか普通と違う人」と思われやすい。それはわたしたち医療従事者が、わかりやすい説明を発信できていないということでもあると思っています。

今回のブログで高次脳機能障害の雰囲気を掴み、もう少し細かい部分まで理解できそうと思っていただければ嬉しいです。

こちらに高次脳機能障害のもうワンランク踏み込んだ入門レベルの記事をご用意しました。もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

【解説】知識ゼロからの高次脳機能障害1 -注意障害編-

こちらに高次脳機能障害の注意機能の実験であなたの限界を体験できます。もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

【おもしろ実験コラム】脳の限界を体験してうっかりミスを減らそう【高次脳機能】

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